2016年12月30日金曜日

ツートーンジェネレータ その3

 2SC3950で数十mWで1Wがでることはわかった。
 2SC1909も2W程度入力すると10W近く出ることもわかった。
 能力的には使用できるわけだが接続時のロスをどうするのかが問題というわけだ。高調波を抑える、および、効率面から同調形の整合法をメインに考えてきたわけだが、シンプルに広帯域増幅に切り替えてみた。

  実装では放熱器として秋月で販売されていた小型のものに取り換えた。
 これで50MHzで100mW入力時に5W程度の出力を得ることが出来た。しかし、出力を絞ると異常発振を起こしてしまう。フルパワーは要らないとふんで放熱器を小型化したのだが700mAの消費電力で4W出力であり効率として50%程度、つまりは4Wの熱放出がある。その結果として放熱器がかなり熱くなっていた。これだと連続動作は不安だ。しかも、やはり整合ロスは否めないので100mW近い入力を必要とする。

2016年12月29日木曜日

2SC3950 1石アンプ

 T25のIFTの損失が意外と少なかったこともありほぐしてしまうのも勿体ないので2SC3950単体でアンプを組んでみた。

組んだといっても特に工夫をこらしたわけでもない。単なる1石アンプである。違いといえば共振コンデンサを15pFにしたという程度。
 当初は前回の1)の構成で2次巻き線から出力を出していたのだが、いざ通電してみると全然出力がでてこない(笑)。50MHz付近に影響するような周波数特性を持つのは出力タンク回路のみなので 周波数を振ってみたがほとんど変化しなかった。100mW入力で100mW出力と増幅していないのだ。いや、高調波は出ているから逓倍器というべきか・・・
 前回の特性測定は-10dBmで測定していたので大電流特性となると話は変ってくるのかもしれない。ともかく15pFで狙い通り50MHz付近に同調してはいるようであったため二次巻き線を撤去して一次側から直接出力することとした。50Ω系であれば10V^2/(2*50)=1 W 出力の計算である。
 今度は無事1Wの出力が得られた。この時の入力は14dBmだったのでおおおよそ16dBの利得となる。fTが高いトランジスタなのでもう少し利得があるかと思ったがこんなものなのだろう。ちなみに、-20dBm入力では0dBm出力となりA級動作領域であれば20dBの利得があるようだが、この程度であれば別にTO126サイズにする必要もない。普通のTO92やチップTrでも得られるので無意味だ。
 現在、想定している2SC1909に繫ぐには0.5W程度の出力が必要なのだが、段間の損失、2SC3950の入力マッチング回路(ステップダウン)のことを考えると全体の利得としては10dB程度となり50mW程度の入力が必要になりそうだ。そうすると発振段も加えて4ステージ構成となってしまうが、さすがにこの程度の回路で4ステージ構成というのも大げさではあるし、各段の相互作用によるトラブルも起きてきそうである。
 2SC1909を消費しようという思惑があったのだが、FETにながれてしまおうか、悩むところである。

なお、周波数特性についてだが、共振回路のインピーダンスを200Ω程度、タップ位置を1/3に設定しているので22Ωに対して50Ωの負荷となりQは1~2程度(トランジスタの出力インピーダンスを勘定に入れるかで倍違う)となり、45MHzから55MHz程度まではそれほど出力は低下しない。Qの割には選択性があるともいえるのだが(笑)。

トロイダルコアでIFT

 そんなに時間が取れなかったので小ネタを。
 455kHz、10.7MHzといった有名どころの周波数以外の段間を接続するトランスとして長らく定番の位置を占めていたFCZコイルが廃版となって久しい。共振インピーダンスを200Ω程度としタップは中間にとる、1次2次の巻き数比は1:3とするといった性能を追求するというより妥協するという設計思想であるので究極の性能をというわけにはいかないが、なにぶん形状、特性が規格化されていたので良好な再現性が得られるというのが普及した要因だろう。現在も互換品、類似品がある程度入手可能である。
 別の代替案としてトロイダルコアを用いたIFTを使用するというのも使われていて、海外の作例を見ると特性には完全に目をつぶってフェライト系のコアを使用した例も見受けられる。特性を追求するといってもFCZコイルと異なり実装後にインダクタンスを調整するということは出来ないのでトリマコンデンサを使って調整することとなる。とはいえ、トリマコンデンサは実装面積を取り、温度特性もそれほど良いとは言えないので、結局のところ性能向上にどれほど貢献しているのか?という疑問は残る。

 今回、3種のトランスを製作して特性を調べてみた。
1)T25#6コアにA:B = 5 turn : (5 + 10) turnとしたもの
2)T25#6コアにA:B = 5 turn : 5 turn巻き、同調巻き線として別に15 turn巻いたもの
3)T37#6コアにA : B = (5 + 10) turn : (5 + 10) turnとしたもの
の3種類である。それぞれ5 turnの巻き線に50Ωの信号源、および負荷を置いて特性を見てみた。
設計はFCZコイルに合わせて50MHzで200Ω程度となるような巻き数を選んでいて15 turnの巻き線にそれぞれ12 pFのコンデンサを付加している。設計上では15 pF程度となるのだが、実装の都合上コアに均等に巻き付け出来ないので多少インダクタンスが計算より増えることを見越したのだが結果からいうと15pFでも良かったかもしれない。

1)A→B方向
 共振点:56.6MHz loss 0.5dB
 3dB幅:7.9MHz Q:7.2
 B→A方向
 共振点:55.9MHz loss 3.0dB
 3dB幅:8.6MHz Q:6.5

2)共振点:52.9MHz loss 0.1dB
 3dB幅:4.1Mhz Q:12.9

1,2)は単同調らしく単峰特性となった。1)で方向により特性がそれなりに違うのは意外だったが、測定の手技的な影響は否めない。測定中の方向転換時に巻き線が動いてしまうため距離が変化したということもあるとは思う。
2)は1)よりも損失が大きいと思ったのだが結果としては逆で少なくなった。ただし、2)では60~70MHzに反共振点とみられるディップが存在していた。位相も見てみたのだが、1,2)共に共振点ではおおよそ90度ずれていた。トランスとしてみれば0または180度となるのでリークインダクタンスの影響だと思う。直流阻止としては小容量のコンデンサを結合コンデンサとして使用する例が時折見受けられるが、90度ずれるということから考えるとインダクタンス補償は回路デザインによっては特性を大きく変化させる可能性があろう。

3)は意外にもLSB型のクリスタルラダーフィルターのような特性を有していた。たまたまという可能性は充分にあるのだが、二峰性になると思っており、10MHz程度のフラットな領域がでるとは思っていなかった。フィルターとしてみれば通過帯域、阻止或ともに満足いく性能とはいいがたいが使いどころはあるかも知れない


それぞれ特徴があって面白い。かといって2,3)の用法の場合は安易に実装すると発振に悩まされるかも知れないが・・・


2016年12月27日火曜日

ツートーンジェネレータ その2

ツートーンジェネレータの続き

 2SC3950から2SC1909への接続にFB101の1:4ステップダウントランスを二段とした場合にはFB101が発熱することが判ったのでLCマッチに変更してみた。

 2SC1909のCbeが100pFくらいあるのが心配ではあったが想定インピーダンスを4.6Ωにおいたので入力容量の影響は大きくないようである。4.5ΩとしたのはLCマッチングの計算上、トロイダルコアで4turnとキリが良い値となったためである。ここではQはそれほど必要ないというか、あまり帯域が狭いと2SC1909の出力マッチング回路と影響しあって発振する懸念があったのでQ=0.3などと普通にはとらない値で計算している。これなら単なるLマッチ回路でもいいだろうといわれそうだが、電源供給用のチョークコイルを省略したかったので電源:コレクタ間にコイルを入れたかったのである。2SC1909には1Wも供給できれば良いので2SC3950の出力インピーダンスは50Ωとした。このような回路にすると2SC1909のベースが直流的に浮いてしまうのでFB101を介して接地している。これでも数Ωと予想される2SC1909の入力インピーダンスに比べれば大きいので問題はあるまい。
 計算してみると共振器のコンデンサは20pF程度ということになり、これなら2SC3950の出力容量や配線容量で賄えるだろうと、最初はコンデンサをつけなかった。この状態で通電すると100mW入力で3W程度の出力が得られた。出力から逆算すると2SC3950は0.5W程度を出力している計算となる。このあたりは計算通りと言えるが2SC3950の利得は5倍、約7dBと高fTを期待して採用したにしてはお寒い限りだ。
 しばらく通電していると2SC3950のあたりが熱くなってきた。おおよそ120mA程度流れているので1.4W入力があり、0.5W弱を出力したとして1Wが消費されているのでこんなものだろう。2SC1909には放熱器がついているので終段のほうが冷えているとなんだかおかしな状況ではある。ここでトロイダルコアが熱くなっているのに気付いた。Qは低いのでこんなに発熱するわけもなくおかしいと思い、当初の設計通り20pFを並列に接続したところコアの発熱は収まった。コイルのインダクタンスで阻止するにはインダクタンス不足で発熱したのだろう。
 水晶発振にバッファをつけたばあい、得られる出力はせいぜい10mW程度なので利得がもう少し欲しいところである。そんなわけで入力を下げてみると、50mW程度にすると一気に100mW程度にまで低下してしまった。典型的なC級のノンリニアな特性である。なかなかすんなりとはいかない・・・

2016年12月26日月曜日

中国製2SC1306/1307 part1

 2SC1306, 2SC1307は1970~1980年代に開発されたCB帯~50MHz用の電力トランジスタである。CB帯ではAMが使用されており終段で変調する方式が主体だったので12V系での使用であったとしても4倍の電圧に耐えられるようになっていてFM主体のVHF以上用のトランジスタの耐圧が大抵30V程度であるのと好対照である。このマージンを利用して供給電圧を上げて出力をあげるなどということも行われていたらしい。
 CBでの需要が低下してHFハイバンド~50MHz用途の電力素子の開発生産が終了されてもなお市場在庫が流通していたわけだが、さすがに枯渇してきていて秋葉原の電気街をまわっても目にすることが難しくなってきている。そんな折、2SC1307、2SC1945、2SC1969といったトランジスタが主に中国において安価に販売されている。2SC1307などは10個で1000円をきる状況であったりするわけだがgoogleの検索をかけると出力が出ないという問題が頻出していることがわかる。実際、アリババやebayといった海外のサイトで販売されているこれらのトランジスタの写真を見ると本物らしい写真を掲載しているものもあるが、どうみても違うのではないか?という写真を掲載していながらgenuine original 2SC1307というように説明しているものもあったりする。こういうものは安価な現行トランジスタの刻印を削ってリマークして販売しているものであるらしい。さすがにTO-220より小さなパッケージではないと思うが、TO-3のような大きなトランジスターを使用してみたらすぐに故障するので割ってみたところ小さなトランジスターをエポキシ樹脂で封入していたなんてこともあるようだ。
 数A程度のシリコントランジスタは100MHz程度のfTの製品を作成するのは容易なのでこのようなニセモノを購入したとしても21MHzあたりで使用する分にはそれなりに増幅したりしてニセモノの気づかない可能性もあるが、販売業者にクレームが届かないのも不思議な話である。
 そんなわけで、もともと所有していた日本製の2SC1306、2SC1307があり比較してみるのも面白かろうと好奇心をおこしてニセモノを中国より購入してみた。そうして届いたのがこのようなトランジスタである。

それぞれ2SC1307と2SC1306の中国製と日本製を順に並べてある。下の方にそれぞれの裏面も掲載した。写真では判りにくいが、まず色が違う。往年のNEC製トランジスターはエポキシ樹脂が総じて灰色がかっており艶消しである。2SC1306,1307も灰色っぽいのに対して中国製は漆黒である。マーキングも日本製は印刷であるが中国製はレーザー刻印でよくみないと表示自体が判らない。NECは90年代だったと思うがロゴフォントを変更しており日本製は変更前の懐かしい書体であるのに対して中国製は丸みを帯びた最近のものに近い。フィンについても日本製は出っ張りであるのに対して中国製はよく見かける欠けたタイプとなっている。
 たとえニセモノであったとしても電気的特性に互換性があるのであれば使用はできるわけでユーザーにとって実害はないともいえる。トランジスタに限らず、一般製品で中国や韓国のニセモノ屋にクレームをつけた時にホンモノと同じように使えるよ?何が問題なの?と切り替えされるらしいのだが、お国柄といえよう。互換性がないから問題になっているわけだが、どのくらい互換性がないのか?直流的なところから調べてみた。

 手持ちの日本製2SC1306/1307をトランジスタチェッカで調べてみるとピンレイアウトは左からBCEでコレクタフィンとなっていた。hFEはそれぞれ38と34で高周波電力用素子としては一般的な値である。2SC1815だと100以下というのにはそうそうお目にかからないわけだが、高周波領域における実質hfeはft/(動作周波数)が相当するので150~250MHz程度のfTであればCB帯としても10以下になっており直流での電流増幅率が低くても実用上関係ないのである。しかも、たいていの場合バイアスをかけたとしてもエミッタを直接接地してしまう固定バイアスで使用するので100以上のhFEがあるとバイアス電流の設定がやりづらくなってしまう。そういう意味でも数十のhFEというのは扱いやすいわけだ。
 さて、中国製の2SC1306/1307であるがピンレイアウトはBCEで変わらずであったがhFEは152、150と高い値を示した。データシートでは最大値として150から200程度まであることになってはいるものの、この程度の電力用途でこんな高い値のトランジスタにはお目にかかったことがない。冷間時のバイアス設定は電流が少なくて楽そうではあるが熱変動での暴走が厄介そうだ。
 つぎにVCEO、VCBOについて測定してみた。2SC1306/1307のデータシートでは所定の抵抗でベースを接地した時のVCERしか掲載されていないのだがVCBOで70V程度のこの種のトランジスタのVCEOは40~50V程度のことが多いので、2SC1306/1307もそうだろうと予想した。測定は簡便に5.6kの抵抗とLEDを接続して電圧をかけてLEDが光った電圧を耐圧とした。耐圧条件が記載された素子でも1mA程度流れた電圧を耐圧とするとしていることもあるのでそれほどおおきな誤差にはならないだろう。
 VCBO/VCEOは日本製2SC1306がそれぞれ80/77V、2SC1307が63/45Vであるのに対して、中国製は2SC1306/1307どちらもBC間には200V以上の電圧を書けてもLEDは光らなかった。VCEOはそれぞれ160V、120Vであった。TO220ベースであるところで電力用トランジスタのリマークだと予想していたのだが2SC1306と1307で違いがあることには驚いた。同時期に購入しているのでてっきり同じ品種をごまかしたものと予想していたのだが、ニセモノの中身にも複数品種があるようだ。つまりはたまたま当たりに見える素子にあたる可能性がないとは言えないということだ。今回購入した中には当たりはなかったのだが、そのようなものに遭遇した購入者もいたのかもしれない。

 肝心の高周波特性については使用に耐えないものであることが判明しているのだが、それはまた後日ということで・・・
 

2016年12月25日日曜日

ツートーンジェネレータのみち

 高周波回路の設計は素子が持っているインダクタンス、キャパシタンスが負荷される電圧や温度といった環境要因により変動するので確固とした値を計算するのは難しい。このことを差し引いても、データシートの測定条件を構成した時の再現状況が悪いのはどうしたものだろうか?

 話は変わるが、50MHzのポータブル機は古くはRJX-601、FT-690、現行機ではFT-817と1~5W程度が主流だ。これは有効電源電圧を10V程度とするなら50Ω負荷だと10^2/(2*50)=1であり、12.5Ωなら4Wとなるのでインピーダンス整合が容易で電流容量の関係からこのあたりが設計上も実用上も妥協点なのだろう。ちょっとした移動であればいいのだが、自家用車といった移動手段を確保した上で、あるいは、自宅で運用といった際には免許要件の上限まで電力を上げてみたくなる。そんなわけで10W(今は20Wか)に増幅するリニアアンプの製作記事はビギナー雑誌の定番で50MHz帯用ではCB帯用のトランジスタを用いていることが多かった。この手のトランジスタは27MHz帯で15~20dB程度の利得を持っているので50MHzでも6~10dBの利得が見込める。この上の帯域用のトランジスタになると高価になるとともに、使いやすいTO-220パッケージで無い、FMが主流なので直線性が悪い、30V程度の耐圧なのでSWRが悪いと跳びやすいということもあり、数W出力を持つポータブル機には6dBでも充分な能力なので使用されてきたというわけだ。

 CB用といっても10Wの能力を持つのが必要なのは米国市場があったためで、市場の縮小とともに需要も減り、それと共にメーカーの開発意欲も減退していく。このあたりを対象としたトランジスタとしては2SC3133が最終版だろうか。そのような中、三菱電機が手軽に扱える高周波用素子としてMOS FETのRDシリーズをリリースしてくれたのは僥倖であるといえよう。利潤としては小さいのかもしれないがニッチを担う素子として販売を続けていただきたいと思っている。誉めあげといて落とすというのも意地が悪いことだが、このRDシリーズはMOS FETということでバイポーラのトランジスタとは異なる特徴を持っている。HF用といいながら上手くつくれば430MHz帯あたりまでカバーしてくれ、20dB近い利得があるのは非常に優れた特長で増幅歪の抑制が必要な昨今としてはNFBを安定にかけるのに有益だといえよう。しかし、IM3が最良となる点を推奨としているせいか10Wクラスのアイドル電流は0.5Aを推奨しており、常にフル出力となるCWやFMならまだしもSSB用としては常に6W近くを消費しているというのは無駄に感じるのも事実だ。このFETで何度か試作しているがIM3で30dB程度を実現するにはやはり0.5A程度消費するのが最良でアイドル電流を増加しても減少させてもIM3は悪化していた。AB級は歪をフィルターで除去することで目立たなくする手法であるからしてそれもまた時代ということになるのか・・・。

 話がそれまくっているが、ポータブル機のリニアアンプとしてはRDシリーズは10W得るのに0.1~0.2W程度あれば良いことになるので電力的に無駄になってしまってもったいない、そのようなわけでトランジスタの活用でしのいでみようかな、そんなことを考えてみたわけである。そんな中でどうせ作るならきちんと特性を取ってみたいと思ったのだが、困ったことがあった。最近はスペアナやSSGといった測定機がそれなりの値段で入手できるようになり、入手も出来たので簡単にできるだろうと思っていたのだが、SSGの出力は精々100mWであり必要な数Wには届かない。そしてIM3を測定しようと二波を入力しようとすると合成でのロスがありアンプの入力としては不足してしまうのである。最初は2台のSSG出力を合成してから中間アンプで数Wに増幅してやればよいかなどと安易に考えていたのだがRDシリーズでも30dB程度のIM3であり、測定の入力用としては不十分である。結局5,6W近いモノトーンを合成して数Wのツートーンを得るのが手っ取り早いという何をしたいのかがわからない事をするのが早道であるということになり5,6Wクラスのトランジスタアンプを作ってみることとなったわけだHiHi
 やっと最初の話題に戻る。NECの2SC1909が豊富に販売されていたこともあってこのトランジスタの活用を考えたのだが、データシートの通りに作ってみたものの出力が取れない。手軽にユニバーサル基板で作ったから?というわけで基板にしてみたもののうまくいかない。受信用のトリマを使用していたので電流容量が足りないのか?とも思ったので固定コンデンサにして補助にトリマを使用してみようかと考えてみた。しかし、どの程度のコンデンサを付けてみたらよいのか?それがそもそもわからないのでスミスチャートをひいて考えてみた。スミスチャートの作図にはMr.Smithを使用している。
 50MHz使用例ではVcc=12Vで0.5W入力時に5Wとなっていて、入力を増やすともう少し余力がありそうでもあったので7Wとして計算すると7Ω負荷、ここにCobが60pF程度がぶら下がるのだがコレクタフィンということで実装時の容量を加えて100pFとして作図してみた。データシートではコイルデータしかなかったので径8mm, 7t, L=14mmのコイルを実測しておおよそ500nHとした。そうしてコンデンサ容量を変化させながら最良点を探してみると並列容量が13pF、直列容量が7.5pFとなった。この時のQは15程度である。設計のQとしてはこんなものなのだろうがなんのことはないデータシートに記載のトリマコンデンサは過大容量のものがついていたわけだ。45pFのトリマでは実装の付加容量もろもろの要因で最適値が取れなかったのだろう。参考値くらい欲しいところだが計算も関数電卓全盛のころだろうから無いものねだりなのかも知れない。このステージのQを高くしたところで別回路との干渉を防ぐためにトロイダルコアを使用したり安価なトリマコンデンサを使用した場合には損失が増えるだけなのでQを下げてデザインしなおしたところ130nH、並列52pF、直列33pFで間に合いそうだということが判った。データシートはプロは参考程度に使用するものであり、実際に使用する際には自分で特性を把握して設計していく、あるいはカットアンドトライを測定機を使用しながら行っていくものであっただろうから再現性にはそれほど意義がなかったのだろう。それを大いに参考とせざるを身としてはもっと詳細にしてほしかったところだ。

 出力はこれで良いとして入力について考えてみる。データシートの回路は計算上はスペックが出せるのだろうということはわかったが整合可能範囲が広すぎて2SC1909の入力抵抗の推定には使用できない。実測データの活用も考えたが、先の計算から判るように数pF程度の容量が出てくると誤差が大きくなりすぎるだろう。というわけで、別のアプローチをとってみようと思う。
 負荷7Ωで10Vなら電流は1.4A程度流れることとなる。トランジスタのfTは電流の関数となるので必ずしも使用できるかはわからないが、fTはデータシート上では約180MHz(@350mA)なので50MHzでのhfeは180/50=3.6となる。つまりベース電流は約390mAというわけだ。この時の入力が0.7WとするならIpeak^2*R/2=Pの式から9.2Ωとなる。入力容量のロス分もあるがトランジスタの動作原理から片方向しか電流は流れないので実抵抗としてはもう少し低いであろうということで1:3のステップダウントランスを作成して5.5Ωとして試作してみた。すると0.5W入力でおおよそ5W程度が得られることがわかった。やっとトランジスタの能力としては間違いないだろうということが確認できた。強引に2W程度まで入力してみるとVccを14V程度にすると10Wが得られた。C級ということもあって効率はよく電流計も1~1.5A程度しか振れていない。設計Qを下げたということもあるだろうが小さいわりにトリマは熱くなっていない。多少不安はあるが固定コンデンサなしでも耐えそうだ。
 さて、2SC1909が能力を発揮できることはわかったわけだが、目的の5W程度を得るのに0.5W程度の入力を得ようとするとさらにアンプを追加する必要がある。SSGを入力に使用するなら100mW程度で5倍程度で済むが出来れば余裕を持たせたいので20dB近く稼ぎたいところだ。トロイダルコア活用本をみると1WクラスのアンプはCB用のドライバーを使用して14MHzなら20dB程度の利得が得られている。このあたりのトランジスターのfTも精々200MHz台だとするとfTと利得の相関からfTが1GHzくらいあるトランジスターを使用すると50MHzでも20dB得られる期待が出来る。本当は容易に入手できる汎用品の使用を想定していた。入手性がそこそこ豊富な海外TrであるPN2222AはfT=300MHzでPa=600mW(@25度)なのでなんとかできるかと期待していたのだが、出力もゲインも安直な製作では少し足りないのでプッシュプルで多段にすることになりそうなので断念した。そんなわけで手持ちのトランジスタで放熱板なしでも数百mW程度は耐えそうなものということから2SC3950を選択して回路を作製してみた。当初は2SC3950のチョークとしてFB101で製作した。安定に動作はするのだが100mW入力でやっと5W程度となり2SC3950の利得が数dBしかない計算となる。まぁ仕方ないか・・・と思っていたら通電しているうちにだんだん焦げるような臭いがしてきた。トランジスタでのロスが大きいのかと思っていたら、発熱はFB101のチョークだった。3 turnなので約3uH、50MHzなら1KΩくらいになるがこの周波数だとQは期待できないので200Ω程度あればよいかと考えていた。しかし、50MHzでのインピーダンスがもっと低いか、負荷抵抗が予想より高くて200Ωでも阻止できなくなっていたのだろうと考え、FT50#61に変更した。これも当初は10turn程度としたのだがまったく出力が取れず負荷がトランスの最適値3Ωより高かったということなのだろう。20turnまで増やすことでFB101と同じく100mW程度で5Wの出力が得られるようになった。しかしながら良いことばかりではなく、チョークのf特がよくなった代償として寄生振動がでるようになった。10mW程度の入力に落とすと盛大にスプリアスが出てくる。考えてみればC級動作なのでトランジスタがONするまでは原理的に高抵抗なわけだ。2SC3950としては動作途中でインピーダンスが不連続に変化するわけでやってらんねぇと叫びたい状況なのかもしれない。

 さて、次はどうしようかな。