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2017年2月26日日曜日

整流管は劣化するか?

 そろそろ半導体の話題に戻ろうかといろいろと試してみているがまとめるにはどうもしっくりとこない。手持ちの真空管でも未使用のものがいろいろとあるので目移りもしてしまっている。6BM8や16A8が結構あるので、そろそろ使用してやってこじんまりとプッシュプルなんてどうだろうか?などという考えが頭をよぎるかと思えば、4M-P12や7M-P18といったトランスレスのテレビ球もあるのでこれでシングルもいいかなぁという考えが頭をよぎるといった具合だHi

 前回の6FY7やKT88は久しぶりのシングル構成だった。テストとして作成した1Wクラスのアンプを除けばこのような6V6シングルが実用として作成したものとしては最初になる。

これは100 mAの電源トランスN-10の280V出力を整流管5Z4で整流して6SL7/6V6を駆動するオーソドックスなものだ。使用球は全て旧ソ連製の互換球を使用しているので新品(NOS)であっても4本で1500円程度とチープなもの。チョークと抵抗で平滑化しているので自己バイアス込のプレート電圧は220V程度だ。
 これを作った動機はともかく整流管を使用してみたいと思い当時250円程度だったので購入してみてそれにあう電流量としては6V6が適当だった、それだけであるHi

 このあと製作の主体はプッシュプルに移っていくのだが、このシングルアンプもその後作成したプッシュプルアンプでも整流管アンプでは右側手前の整流管を差し替えて使用してきた。プッシュプルアンプは設計電流は150~200 mA程度使用するので当初は5AR4を前提として製作したのだが少し電圧が高くなりすぎたので定格(125 mA)を超えていることを承知で使用していた。このシングルを製作したのが2011年なのでトータル通電時間は5000時間程度は経過しているかと思う。
 真空管を使用し始めて意外だったのが寿命がこないということだ。真空管といえば切れて交換が前提なのでソケット使用なのであり、その寿命ゆえにトランジスタに駆逐されたということになっている。実際、今は見なくなったがブラウン管のモニターが使用時間とともに暗くなっていくのを実感していたので、使用しているうちに使えなくなってしまうものだと思って球を購入するときにはたいてい予備球も入手していた。しかし、今まで製作した中で使用できなくなった真空管は誤ってとばしてしまったものを除けば6P14P(6BQ5 ソ連互換球)1本だけで、これもヒーターというよりはSGの過熱による暴走だった。
 KT88シングルを鳴らしてみてこの6V6も久しぶりに聞き比べてみようとひっぱり出してきて整流管もこちらに里帰りさせたのだが、各部の電圧を測ってみると製作時とあまり変化していないようにみえる。しかし、定格越えで使用していた整流管なら劣化しているに違いないとばかりに特性を確認してみることとするHi

 
 これが今回計測した三本である。左の二本が5Z4のソ連互換品で40年近く前の製造品だが真空管としては後期の製造である。右はプッシュプル用に入手したもののほぼ未使用のSOVTEK製5AR4である。
 5Z4の頭部をみてもらうとわかるが使用中の5Z4のガラスは金属が蒸発したせいか黒くくすんでいる。


 一部を拡大すると多少わかりやすいと思うが、下部のゲッターの鏡面が未使用は銀色なのに対して使用中のものは暗い鏡面になっていて、電極を支えるマイカ板もプレートのあたりが黒く汚れてきている。
これはhttp://www.tubedata.orgから入手した5Z4の特性カーブだ。50 mA/10 V、130 mA/20 Vとなっており、この間の内部抵抗は125Ωである。
VpIn useNOS5AR4
0000
5202070
104050160
157070240
2090120360
25130160460
30180210600
35210270
40300330
ヒーターに所定の5V(ただし直流)を加えて5Vおきに片方のプレートに流れる電流を計測した。10~20V間の抵抗値でいうと使用中が200Ω、未使用が143Ωである。やはり劣化しているといえる。しかし面白いことに40V印加したときには電流値の差が縮まっている。40V以上を流していないので推測でしかないが高電圧を付加するとカソードから強引に熱電子を引っ張るので追いついてくるのかも知れない。平均電流で100~200 mAで使用しているので整流管を流れる電流としては数百mAになっているからこの領域までくると劣化が目立たなくなっているのではないだろうか?そう考えると使用中のアンプの電圧がそれほど違っていないことの説明がつく。
 比較用に5AR4も見てみたがさすがに200 mA級なだけあって非常によく電流が流れる。5Z4と比べて20 V程度電圧が違っていたのもこれをみれば道理というものだ。

2017年1月4日水曜日

偽物2SC2314 その1

読者の方々(実は現在誰もこのblogを訪問された方はいない(笑))、あけましておめでとうございます。ぼちぼちと書き綴っていきますのでよろしく。

 今日のネタは偽物トランジスタである。今回はCB用ドライバーの2SC2314をとりあげる。これはCB用として開発されたトランジスタとしてはかなり後発にあたる1W程度の出力のためのトランジスタで0.5Wが最高出力であった日本規格としては終段、出力の大きなアメリカ規格としては終段の1,2段前のドライバー用となっている。データシートでは27Mhzにおいて35mW入力に対して1.8Wの出力となっていてfTが250MHz@50mAと50MHzでもそこそこの性能が期待できるトランジスタだ。
 三洋は意外と(失礼)高周波につかえるトランジスタを後期まで販売していたのだが、メーカー自体が合併されてしまう憂き目にあっており廃版となって久しい。しかしHFハイバンドから50MHzで1W程度の出力を持つトランジスタというのはなかなかないので、自作派の無線家にとってはそこそこの需要があると思われる。

 さて、またまた中国から2SC2314を入手してみたところ、これがまた偽物であったので調べてみた。


 実は届いた偽物は大きくわけて三種類あり、すべて違った特性だったのだが、今回は一つだけ紹介する。本物もレーザーマーキングの時代のものであり、マーキングは結構見にくい。データシートを参照してもらうとわかるのだが、本物は表側に逆三角形を描くようにピポットがそんざいする。偽物にもピポットがあるのだが三つの大きさが異なる。これはもともとなのか、後で付け足したのかはわからない。裏側も若干形が異なっている。

 今回、このような回路を組んで特性を調べてみた。



 このトランジスタは高周波用としては高いhFE(~200)を持っており、バイアスを調整しないと面倒なのでC級で計測することも考えたのだが、入出力のインピーダンス変換の周波数特性の影響を減らすためにAB級で計測することとした。簡単に取り換えられるようにICソケットを3端子分使用している。トロイダルコア活用百科では1Wクラスのアンプでは60 mA程度のバイアスを流すことになっているが、放熱器を結合させるのが面倒だったので30mAで測定した。バイアス調整も短時間測定ということで熱補償もなく単に抵抗で分圧したのだが、この副作用もでてしまった。

 これが測定した結果である。本物、偽物ともに20dBmで飽和してしまっており、設計値よりも10dBも低い値になってしまっている。偽物2SC2314の方で10dBm以上を入力すると、測定中に消費電流が30mAよりも下がってしまった。真空管の回路では入力がない状態で通電するとプレート電流が流れすぎてしまうので電圧を落とすかきちんと入力を加えることを覚えている方もおられると思う。これはグリッドの整流作用によりグリッド電流が流れたことでグリッド電位が負に傾き電流が抑制されるからなのだが、これと同じことが起きており、ベース電位が低下したためにAB級動作からC級のモードに変化してしまったのだろう。簡単なバイアス回路にするために直流としても入力抵抗が高すぎて一種のAGCのようになってしまったために20dBmで飽和してしまったものと考えられる。
 飽和しない入力レベルである-20dBmを見ていただくとわかるのだが、どちらも1MHzでは30dB近い利得がある。本物は50MHzでも15dB程度の利得があるが、偽物は50MHzで利得は0となってしまった。入力に4:1のステップダウントランスを入れて50Ω時に対して2倍の電流を入力していることになるので6dBの利得の時にトランジスタのベース電流とコレクタ電流が釣り合うことになる。fTの定義はエミッタ接地における電流増幅率が1になったところであるから、本物のfTは100MHz程度、偽物は30MHz程度と読み取れるわけだ。
 この値は本物としてもデータシートでは250MHzとなっているわけなので低すぎるのだが、回路自体の周波数特性により劣化したこと、データシートは50mAの時のfTであるので30mAでは低くなっていることが考えられることの相乗作用であると思う。こんなことは言い訳といわれても仕方ないが、実際に使用する条件に今回は近いわけで、このような回路でそれなりに使用できないようでは使えないと思ってよいのではないだろうか?

 ちなみにDE-5000を使用して100kHzにおけるCbeを測定すると本物は30pF程度、偽物は60pF程度と違いがあった。


2016年12月29日木曜日

2SC3950 1石アンプ

 T25のIFTの損失が意外と少なかったこともありほぐしてしまうのも勿体ないので2SC3950単体でアンプを組んでみた。

組んだといっても特に工夫をこらしたわけでもない。単なる1石アンプである。違いといえば共振コンデンサを15pFにしたという程度。
 当初は前回の1)の構成で2次巻き線から出力を出していたのだが、いざ通電してみると全然出力がでてこない(笑)。50MHz付近に影響するような周波数特性を持つのは出力タンク回路のみなので 周波数を振ってみたがほとんど変化しなかった。100mW入力で100mW出力と増幅していないのだ。いや、高調波は出ているから逓倍器というべきか・・・
 前回の特性測定は-10dBmで測定していたので大電流特性となると話は変ってくるのかもしれない。ともかく15pFで狙い通り50MHz付近に同調してはいるようであったため二次巻き線を撤去して一次側から直接出力することとした。50Ω系であれば10V^2/(2*50)=1 W 出力の計算である。
 今度は無事1Wの出力が得られた。この時の入力は14dBmだったのでおおおよそ16dBの利得となる。fTが高いトランジスタなのでもう少し利得があるかと思ったがこんなものなのだろう。ちなみに、-20dBm入力では0dBm出力となりA級動作領域であれば20dBの利得があるようだが、この程度であれば別にTO126サイズにする必要もない。普通のTO92やチップTrでも得られるので無意味だ。
 現在、想定している2SC1909に繫ぐには0.5W程度の出力が必要なのだが、段間の損失、2SC3950の入力マッチング回路(ステップダウン)のことを考えると全体の利得としては10dB程度となり50mW程度の入力が必要になりそうだ。そうすると発振段も加えて4ステージ構成となってしまうが、さすがにこの程度の回路で4ステージ構成というのも大げさではあるし、各段の相互作用によるトラブルも起きてきそうである。
 2SC1909を消費しようという思惑があったのだが、FETにながれてしまおうか、悩むところである。

なお、周波数特性についてだが、共振回路のインピーダンスを200Ω程度、タップ位置を1/3に設定しているので22Ωに対して50Ωの負荷となりQは1~2程度(トランジスタの出力インピーダンスを勘定に入れるかで倍違う)となり、45MHzから55MHz程度まではそれほど出力は低下しない。Qの割には選択性があるともいえるのだが(笑)。

トロイダルコアでIFT

 そんなに時間が取れなかったので小ネタを。
 455kHz、10.7MHzといった有名どころの周波数以外の段間を接続するトランスとして長らく定番の位置を占めていたFCZコイルが廃版となって久しい。共振インピーダンスを200Ω程度としタップは中間にとる、1次2次の巻き数比は1:3とするといった性能を追求するというより妥協するという設計思想であるので究極の性能をというわけにはいかないが、なにぶん形状、特性が規格化されていたので良好な再現性が得られるというのが普及した要因だろう。現在も互換品、類似品がある程度入手可能である。
 別の代替案としてトロイダルコアを用いたIFTを使用するというのも使われていて、海外の作例を見ると特性には完全に目をつぶってフェライト系のコアを使用した例も見受けられる。特性を追求するといってもFCZコイルと異なり実装後にインダクタンスを調整するということは出来ないのでトリマコンデンサを使って調整することとなる。とはいえ、トリマコンデンサは実装面積を取り、温度特性もそれほど良いとは言えないので、結局のところ性能向上にどれほど貢献しているのか?という疑問は残る。

 今回、3種のトランスを製作して特性を調べてみた。
1)T25#6コアにA:B = 5 turn : (5 + 10) turnとしたもの
2)T25#6コアにA:B = 5 turn : 5 turn巻き、同調巻き線として別に15 turn巻いたもの
3)T37#6コアにA : B = (5 + 10) turn : (5 + 10) turnとしたもの
の3種類である。それぞれ5 turnの巻き線に50Ωの信号源、および負荷を置いて特性を見てみた。
設計はFCZコイルに合わせて50MHzで200Ω程度となるような巻き数を選んでいて15 turnの巻き線にそれぞれ12 pFのコンデンサを付加している。設計上では15 pF程度となるのだが、実装の都合上コアに均等に巻き付け出来ないので多少インダクタンスが計算より増えることを見越したのだが結果からいうと15pFでも良かったかもしれない。

1)A→B方向
 共振点:56.6MHz loss 0.5dB
 3dB幅:7.9MHz Q:7.2
 B→A方向
 共振点:55.9MHz loss 3.0dB
 3dB幅:8.6MHz Q:6.5

2)共振点:52.9MHz loss 0.1dB
 3dB幅:4.1Mhz Q:12.9

1,2)は単同調らしく単峰特性となった。1)で方向により特性がそれなりに違うのは意外だったが、測定の手技的な影響は否めない。測定中の方向転換時に巻き線が動いてしまうため距離が変化したということもあるとは思う。
2)は1)よりも損失が大きいと思ったのだが結果としては逆で少なくなった。ただし、2)では60~70MHzに反共振点とみられるディップが存在していた。位相も見てみたのだが、1,2)共に共振点ではおおよそ90度ずれていた。トランスとしてみれば0または180度となるのでリークインダクタンスの影響だと思う。直流阻止としては小容量のコンデンサを結合コンデンサとして使用する例が時折見受けられるが、90度ずれるということから考えるとインダクタンス補償は回路デザインによっては特性を大きく変化させる可能性があろう。

3)は意外にもLSB型のクリスタルラダーフィルターのような特性を有していた。たまたまという可能性は充分にあるのだが、二峰性になると思っており、10MHz程度のフラットな領域がでるとは思っていなかった。フィルターとしてみれば通過帯域、阻止或ともに満足いく性能とはいいがたいが使いどころはあるかも知れない


それぞれ特徴があって面白い。かといって2,3)の用法の場合は安易に実装すると発振に悩まされるかも知れないが・・・