[前置き]
老舗の閉店の話題を聞くと近頃はまた下火になってきている感があるが、オーディオアンプの世界では真空管は根強い人気がある。私がこの手の工作に手を染めたころには半導体が全盛となっており、当時の即時性のある工作指南書としての雑誌製作記事にはほとんどが半導体での製作記事となっていた。価格・流通量的にも電池をつかった安全性という意味でも妥当な判断だったろうと思う。とはいえ、その過去記事をまとめた制作集といった書籍には真空管を用いたものが結構紹介されてはいた。今であればジャンクやら回路を工夫してみて試行錯誤してみるということも出来るのだが、製作記事どおりにつくらないとどうなっているのかがわからないという当時では部品の入手性、工具や高圧部品の価格から敷居が高く手を付けられなかった。
オーディオマニアというわけでもなく、一本で千円以上と価格のついた真空管には縁がなかったのだが、ゴミ捨て場で12AU7を拾ったことが契機となった。12AU7はAU, AT, AXとよく知られる双三極管の中では最も低μで内部抵抗が低いということも良かったのだろう。ためしにと電池ボックスを二つつないで20V程度で動作させてみると意外と電流が流れるし、トランジスタ用のトランスを使って音が出ないわけではない。結構面白いと思った。
時代はインターネットの時代となっており、雑誌のような完成系の製作記事ではなく、成功・失敗を問わず中途半端な実験が膨大に公開されるようになっていて、真空管は必ずしも敷居が高いものではないことを知ったわけだ。そういう実験をしている人には安い部品の入手法を紹介されている人もいて、そのような情報をもとに部品を集めていった。半導体での常識では扱えないところも、また新規のデバイスを使うという好奇心を満たしてくれた原因だろう。
そんなこんなでいつのまにかラジオRF用を流用した1W以下のシングルから6L6ppの30W程度のものまで都合10台程度のアンプを今までに製作してきた。とはいえ6L6といっても6L6GCではなくソ連時代の6L6を使用しており、市販品に使われているようなメジャー球を使ってみたいなと思い、球なりトランスなりを出物があれば入手してきたわけである。ところがいざ部品がそろってみたところで問題が生じたのである。メジャー球は真空管としては大出力を出すので高級品価格が見込め採用されている。つまりは部品が我が家には大きすぎるのだ。いざレイアウトを考えるとどうしても我が家の置き場のキャパを超えてしまう。そんなわけで死蔵してきたのだが、それはあまりにもったいないというわけでシングルでならばなんとか設置出来ると見込んで作ることとした。
使用球はKT88をメインとしてEL34、EL156も使えるようにしたい。出力は6L6のシングルで得られる5W以上を三結かULを目指すこととした。球供養ということを考えれば整流管をしようしたいのだが実装面積の都合で今回は採用を見送ることとした。
トランスは東栄の10W用OPT-11Sに山水の倍電圧用トランスPV-145を組み合わせる。
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