2017年2月18日土曜日

KT88シングルアンプの製作(特性測定)

 ほぼ毎日数時間は通電を行ったので、そろそろ球も落ち着いてきた頃合いかと思い、特性を計測してみた。
 B+は360 V、カソード電圧が30 Vとなり1球あたりの電流は75 mAである。トランスの電圧降下が約20 Vあるので有効プレート電圧は340 Vである。一次3500Ω接続にしているので75 mAスイングするとプレート電位は263V振れる計算だ。ロスがなければ計算上は9.8Wの出力になる。しかしながら、トランスの電圧降下も計算に入れると約60 Vで150 mAの電流が流れることになるのでビーム管接続でなんとか流せるかなぁという値である。

 測定はパソコンのWavegeneを用いて入力を行いnanoDSOを用いて計測を行った。

 目視でのノンクリップ電圧は1 KHzで20 Vppとなり、6.25 Wであった。3500 Ω負荷での有効電流は60 mA、電圧が210 Vとなる。計算上有効プレート電圧は120V程度なので三極管接続として考えると妥当な値である。
 ダンピングファクタは1.5 W出力時に2であった。三極管接続の内部抵抗が約1 KΩなので低く出ているがウルトラリニア接続にしてあること、トランスの内部抵抗によるロスがあることからこんなものなのだろう。
 電圧利得は23 dB程度(約14倍)なので1 V程度でフルパワーになる設計通りの値だ。これでも夜間は近所迷惑なのでかなり絞ったところで聞いており、VRのチャネル間の偏差が気になるのでATTを挿入しているくらいだ(笑)

周波数特性は1.5 W出力の時でこのようになった。若干リプルがあるが実測で0.2 V程度であり、測定誤差と考えてよいだろう。コアボリュームに余裕があるためかシングルアンプとしては低域が良く出ている。PCのオーディオが22 KHzまでなので20 KHzまでしか測定していないが、10 KHzでの低下が全く見られないのは、6FY7で使用したトランスの結果を見た後だと驚きである。使用しているのがブックシェルフスピーカーなので、どうせ二桁 Hzの低域特性は絶望的なことを考慮すればプッシュプルにする必要などないくらい充分な性能に見える。

方形波を入力した時の特性は
100 Hz

1 KHz

10 KHz

となっている。前述のようにPCの帯域が20 KHz付近までに制限されているので10 KHzの方形波(3倍成分を多く含む)はそもそも入力が方形波ではなくなっているだろうから参考程度である。

NFBを掛けていない無帰還アンプであり、ほぼ想定通りの特性となった。
 電源トランスを換装して動作時にB+が400 Vになるようにしてやれば完全に三極管接続としても10 Wが出てくるのではないかと思う。しかし、現状で充分実用になっているので固定バイアス化程度で8 W程度を狙い、6 dBほどNFBをかけてやれば常用のDVD/CDプレーヤーに接続するのには丁度よい感じになるので穴を広げる必要があるトランス換装までしなくてもよいのかなぁと悩ましい。
 実は、現状の設定で手持ちのEL34、6L6GをKT88の代わりに挿入して電流を測定してみたのだが、どちらも25~27 Vとなった。この値だと6L6GはSG電圧は超過するものの、プレート損失は約20 Wでどちらも規格内に収まる。経験上、最大SG電圧がプレート電圧より低く設定されている管であっても三極管接続であれば問題はまず出ないので、このままいじらずに球の差しかえをして比較してみるのも興味あるところだ。一方でKT88にとっては軽い動作になるのでもったいないなぁとも思っている(笑)。


2 件のコメント:

  1. セトロです

    こんなブログを初めておられたのですね。

     メールで伺っていたとおりの6φ12πの使い方も理解できました。12ax7の双3極で左右をまかなうこととステップは同様であっても、タマの特性を活かした考え方ということですね。「5極部が余っちゃう」などとけちくさいことは考えてはいけないのだな、と。

     無線ではジャンクなどを用いて、いかに安く作り上げるかが一つのあり方として定着しています。一方でM●誌などを見ても、オーディオはいかにレアな、正統の、高価な部品を使うかが目的関数になっているようです。安価なソ連管を上手に使うアプローチには大きく共感します。
     お話していたように、山小屋でのゲスト向けのはったりとして「いかにもチューブ」アンプをもくろんでいますので、今後もお知恵をお貸しください。

     なお、自宅にはTANGOの立派なトランスを6ca7PPでドライブする「正統派」アンプを作ってあるので禊ぎ(ワクチン接種)は終えてます。これはB+の整流にテレビのダンパー管を2本使っているので、夏に使うと家族から文句が出ます。

    返信削除
  2.  いつまで続くかわかりませんが、備忘録だと思っていただければ幸いですHi

     OPアンプや74シリーズのICでも数回路のうち一つしか使わないというのが一般化してますので必要な部分だけを使用するというのはアリだと思います。高利得と出力を狙って12AX7のパラというのはよく見かけますが、気をつけないと入力・帰還容量も二倍になるのできちんと特性を出すには入力抵抗も半分になるということを考慮しないといけません。
     手軽に出力を取るのに終段をパラにするというのはオーディオでも無線でもよく見かける手法ですがパラにしたからHFまでしか使用できなかったアンプが144MHzまで使えるなんてことにはなりませんからHi

     有名メーカー製の特性がすごく良いのは当然というか、だからこその値段がついているわけです。しかし、それを活かしきる環境をお持ちの方がほとんどいないから化石化しているわけで、経済的にはメーカーも使用者も難しいところですね。

     ダンパー管は活用してみたいと思っています。17Z3があって16A3もあるので16*4+17*2=100 V 0.3Aとおあつらえ向きなのですが、絶縁トランスに200V巻き線が二つあるのはないので特注になってしまいます。それなら球もトランスも手持ちのある6BM8*4でいいやんということに・・・
     あと、規格を見ていて気づいたのですが高耐圧ということで整流管として使用できるといわれているダンパー管もメーカーによっては常用耐圧は200V程度と規定しているものもあるので、安全性という意味では他の真空管と共用するときには電源電圧には留意した方がよさそうです。

    返信削除